課題1 エネルギーバンド構造

固体(結晶)における金属、半導体、絶縁体の違いをエネルギーバンド構造を用いて説明せよ。次の点に留意して説明すること。

①なぜ結晶中ではエネルギーバンド構造が生じるのか、孤立原子の離散的エネルギー準位を出発として説明してみよ。②金属(Al)、半導体(Si)、絶縁体(SiO2=石英)の極低温(T=0K)の状態、室温(T=300K)の状態における電気伝導について説明せよ。

須田の固体電子工学の講義動画(ここにほぼ答えがあります)とキッテルの固体物理学の教科書の範囲で答えてもらえばOKです。
さらに詳しく理解したい人は須田の名古屋半導体塾の講義動画も見てください。


課題2 トランジスタの歴史

世界で最初のトランジスタ「点接触型トランジスタ」は、狙って「発明」されたものではなく、半導体の表面状態を研究する過程での「発見」であった。それをわずか1年で実用的なトランジスタ「バイポーラトランジスタ(npn型、pnp型)」へと発展させたのがショックレーである。ショックレーのバイポーラトランジスタはまさに「発明」であった。

バイポーラトランジスタの電流増幅動作(active region)を半導体物理学の観点で説明せよ。次の点に留意して説明すること。

①npnトランジスタを例にとり、active regionの状態をバンド図を用いて説明せよ。(ベース接地増幅率)=(注入効率)×(ベース輸送率)と表される。ベース接地増幅率が1に近いほどトランジスタの増幅性能は高い。②注入効率を高めるためにはどのような設計をすればよいか?③ベース輸送率(教科書によっては到達率)を高めるためにはどのような設計をすればよいか?

ほとんどの半導体工学の教科書にはバイポーラトランジスタの動作について詳しい解説があります。名大生は名大の電子図書館から半導体の教科書をダウンロードできます。Marius Grundmann著 The Physics of Semiconductors (Springer)がおすすめです。バイポーラトランジスタの解説も、もちろんばっちり(第23章第2節)説明されています。ダウンロードするには名大の学内LANで接続するか、名大IDを用いたプロキシサービスを利用する必要があります。

Wikipediaの英語版北大電子研の太田先生の授業のスライド は動作原理についての説明は素晴らしいのですが、注入効率や輸送率の話がありません。

東京都立大学の奥村先生の講義スライドには詳しい説明があります。(さらに進んだヘテロ接合バイポーラトランジスタへの展開も述べられています。)


課題3 pn接合の空乏層

pn接合は半導体デバイスの基本中の基本です。特に空乏層の振る舞いは非常に重要で、当研究室が得意としている半導体の欠陥評価手法であるDLTSやICTSなどはステップ電圧変化に対する空乏層の過渡的なふるまいに着目した方法ですし、高精度のホール効果測定評価やデバイスの解析などでも空乏層の話がついてまわります。

まずは固体電子工学の講義動画をしっかり見てください。式を覚えるのではなく考え方を身に着けてください。例えばアクセプタ密度Na、ドナー密度Ndのpn接合にVの電圧をかけた時の空乏層幅Wは?と試験で聞くとほとんどの人が正解を答えます。この式ももちろん重要ですが、どのような理由でこの式になっているのかを心底理解することが重要です。たとえば実際の研究ではNdが一定ではなく深さ方向で変わるなどいろいろなバリエーションがあります。そのようなときに、どのような結果になるかなどをすぐに図を書いてイメージできないと、研究を遂行する上で使える知識とは言えません。

講義動画で説明した通り、電圧に対して空乏層幅を求めるのは面倒で、むしろ空乏層幅がこうだった時、結果として電圧はどうなるのかを求める方が自然です。その時に使う式は、たった二つ。「ガウスの法則」と「電界と電位の関係式」のみです。あとは高校数学レベルの微積分です。

勉強が終わったら今年の大学院のパワーデバイス工学特論の授業で出した小テストを解いてください。なお材料はGaNを想定します。比誘電率10.4として計算してください。ウォーミングアップ(cmやm、μmの換算間違いを防ぐための)例題が用意されています。基本問題の問1はほぼ全員が正解でしたが応用問題の問2はほとんどの人が不正解でした。答えを出した後じっくりじっくり考えて矛盾がないか考えてみれば間違えないはずです。じっくり考えてください。(関数電卓やパソコン活用してもらってもOKです。)

研究室に入ると、自分のテーマに関係することについてたくさんの勉強をしなければなりません。参考になる本や論文などは紹介してもらえますが、基本的に自分で調査、勉強して、いろいろ勉強したうえで引っかかっていることを上級生や教員に聞くという勉強スタイルです。その予行演習だと思ってやってみてください。勉強も意味も分からずに勉強するのではなく、自分のやりたい研究のための勉強とわかってするのでモチベーションは違うと思います。

半導体工学は、半導体物理という基本原理に立脚してさまざまな役に立つデバイスを作り出す学問です。ダイオード、トランジスタにはじまりCMOS、CCD、イメージセンサ、太陽電池、パワーデバイスなど様々なものが生み出されてきました。

時計やからくり人形は、ばねやてこ、歯車などわかりやすい物理(力学)に立脚していますが、半導体の場合は、バンド図とか空乏層などを直接目で見ることはできません。でも研究を何年も続けているとそれが本当に体感できるようになってきます。


課題4

  • 研究室を志望した理由
  • 研究室でやりたいこと・身に着けたいこと
  • 中学・高校・大学で勉強以外に頑張ったこと クラブ活動、趣味・特技、バイトなど

をA4 1枚にまとめてください。箇条書き程度でも良いです。面接時に聞く時のきっかけように。


課題は以上です。課題については面接時に説明を求めます。みなさんが自分で半導体の勉強ができるかどうか力を見るためのものです。正解を求めているわけではありません。回答にミスがあっても面接時に議論をしながら間違いに気が付き訂正できけば大丈夫です。(研究室に入ってからもちろん役立つ知識です。)

 

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